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【スタッフコラム】奥信濃への旅
カテゴリー:スタッフコラム<店長・早苗久美子> 2019-11-28更新
11月のはじめ、長野県飯山市を訪れました。長野といえば松本にばかり行っていた私が、今回なぜ奥信濃・飯山へ旅することになったのかというと、
・大好きな映画『阿弥陀堂だより』のロケ地である。
・今年、知人が東京から飯山(しかも囲炉裏のある古民家!)に移住した。
というのがきっかけなのですが、言葉にしてしまうと呆れてしまうくらいミーハーで単純ですね…。
でも、私の中では、ミーハー心だけでは説明できないような気持ちの盛り上がりが。不思議なご縁に背中を押されて「これは今、行くしかない。むしろ、行かないと後悔する」という気持ちになり、休日を利用して出掛けてきました。
飯山はお寺の多い街で、島崎藤村が「雪国の小京都」と表現したほどだそうです。軒先が雪よけの屋根で繋がっている雁木造りの通りは、「仏壇通り」の通称の通り、仏具店が軒を連ねています。その店と店の間に、山側に伸びる小道があり、どの小道の奥にもお寺がある、というくらいにお寺がたくさんあります。
東京より一足早く秋の色彩を帯び始めた飯山。のんびりお寺を巡りつつ、民家や畑の間の小道を歩き、じんわりと染み入ってくる飯山の落ち着いた空気を味わっているうちに、いつの間にか「人の暮らし」とは何だろうかと、ぼんやり考えていました。
飯山では、人の暮らしの存在がとても濃く感じられました。そんな中で自分のことを振り返ってみれば、東京での忙しい日常には充実感もあるけれど、日々を「暮らしている」という感覚からは遠く離れているような気がしたのです。確かに生活はしている。けれど、「生活する」ことと「暮らす」ことは、なんだか少しニュアンスが違うかもしれない、と。
この旅を経て、美しくも厳しい気候風土、人と人の繋がり、信仰や祈りの存在。そういうものの関わりと人間の暮らしについての興味が膨らみました。写真を撮ることを通して、もう少し考え続けてみたいと、今は思っています。
もしかしたら、この体感を得たくて、あんなに強く「今行かなきゃ!」と思ったのかもしれません。
映画『阿弥陀堂だより』ロケ地巡り
もちろん、せっかく飯山に行ったからにはということで、映画のロケで使われた阿弥陀堂にも案内していただいて訪れてきました。映画のセットとして作られた茅葺の阿弥陀堂がそのまま維持保存されています。中の阿弥陀様も映画に出てきたそのまま!
阿弥陀堂は、棚田の斜面の上にあり、ここからの広い景色は、いつまでも眺めていたくなるような懐かしさを感じさせてくれます。
そういえば、唱歌「故郷」や「朧月夜」を作詞した高野辰之氏は、この辺りの出身だそうです。あの歌に描かれる美しい情景は、このような景色がベースになっていたのですね。
飯山を舞台にした映画『阿弥陀堂だより』は、豊かな自然の変化に富んだ四季の移ろいと、そこで営まれる素朴な暮らしを通して、人間が生きることについて描いているような映画です。映像がとても美しいので、ご興味ある方は、ぜひご覧になってみてくださいね。
(文・写真/早苗久美子)