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【スタッフコラム】縁側

カテゴリー: 2019-06-27更新

スタッフコタム_早苗久美子

いつ頃からかはっきり覚えていないのですが、縁側のある家に憧れを抱くようになりました。2009年に公開されたアニメ映画「サマーウォーズ」を見た時、劇中で出てくる“栄おばあちゃんの家”(地方の旧家のとても大きな日本家屋)に、強い郷愁と憧れを抱いたのをよく覚えているので、もしかしたら、その頃から縁側に対する想いが膨らんでいったのかもしれません。

縁側でゴロゴロしながら日向ぼっこ。ふらりとやってきた猫に話しかける。夏には蚊取り線香の懐かしい匂いが漂う中で夕涼み。秋にはのんびり月見酒。気の置けない友人と縁側に座ってまったりと…。

そんな風に、外とも内ともつかない縁側という空間に不思議な安らぎを想像しては、縁側いいなぁ…などと思っていました。

スタッフコタム_早苗久美子

先日、友人でありナダールのデザイン担当サポートスタッフでもある田中と、休日に鎌倉散歩に行ったのですが、建築を学んだ彼女から日本の建築について興味深い話を聞きました。

それによると、日本建築の構造は「柱」と「屋根」で支えられており、西洋の建築では「壁」が重要なのだそうです。壁でしっかり部屋が区切られている西洋建築に対して、日本の建築は空間の区切り方が曖昧なのだと教えてくれました。

スタッフコタム_早苗久美子

例えば、部屋と部屋が襖や障子のような可動式のもので隔てられるようになっていて、閉めれば小部屋になるけれど、開け放って大きな1つの空間にすることもできる。

また、板の間と畳敷きといった素材の違いや、小さな段差を作って高さを変えることなどで空間の区分けを表現するという特徴もある。そんな風に、もともと日本の建築では、空間は曖昧に区切られているものなのだそうです。

そういうはっきりしない「曖昧さ」は、建築だけでなく、コミュニケーションの取り方(はっきり言わずに曖昧な表現を使うことが多い)にも通じるものがあって、そこには、日本人のもともとの気質や物事の捉え方の特徴が現れているのかもしれない、というのです。

スタッフコタム_早苗久美子

その話を聞いた時、私はとても腑に落ちた感じがしました。縁側を求める私の気持ちも、そういう曖昧な空間を必要としていることの表れなのかもしれません。家の中ほどプライベートな空間ではなく、かと言って外でもない。プライベートとパブリックの、ちょうど中間。ちょうど良い具合に開かれれている、ちょうどいい場所。それが縁側なのかな、と。

スタッフコタム_早苗久美子

人と人とのコミュニケーションや、物事の捉え方・考え方にも通じる部分があります。

自分と他人、プライベートとオフィシャル、善と悪、敵と味方…。世の中の物事は、きっとそんなに単純に分けられないものばかりです。だからこそ、寛容さや思いやりに裏付けられた“曖昧さ”を持てる人でありたいと思うのです。

縁側のある家を手に入れるのは簡単ではないので、せめて、心に縁側を、と。

(文・写真/早苗久美子)

*文中の写真は全て「江戸東京たてもの園」で撮影したものです。

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