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【レポート】「はじめての写真展示学」開催しました

カテゴリー: 2018-10-05更新

はじめての写真展示学_レポート

開催から時間が経ってしまいましたが、KOBE819GALLERY代表・野元大意氏を講師にお招きして開催したワークショップ「観る楽しみ 開く楽しみ!はじめての写真展示学」のレポートです。

このワークショップは、9月16日・17日の2日間連続で開催しました。これから個展を控えている方、展示経験はあるけれど自己流のやり方からステップアップしたいと思っている方、鑑賞者の立場や展示を作る側の視点に興味がある方など、参加者の受講のきっかけも様々です。

展示学とは?

展示学ってなんだろう?そう思われる方も多いかと思います。展示学のベースは「作家側の視点ではなく、鑑賞者側の視点で考える」ということです。そこからスタートします。

鑑賞者に作家の意図が伝わるか?
鑑賞者が負担なく作品を見ることがことできるか?

展示しようとすると、ついつい自分の想いを伝えることばかり考えてしまいそうになりますが、どうしたらそれが見る人に伝わるか、という視点が不可欠なのですね。

はじめての写真展示学

2時間×2コマ×2日の8時間。濃密なワークショップの内容を全てご紹介することはできませんが、野元さんが語られたお話の中から、特に印象に残った言葉をいくつか挙げてみます。

・展示は、壁を埋めるために飾るのではない。
・感性だけで作った展示は「何か良い感じですね」で終わってしまうかも。
・作品は、プロジェクトとして育てる。1回の展示で完結ではない。
・鑑賞力を磨く。ショーウィンドウや料理、広告などからもヒントが得られる。
・計画→制作→実施→評価。プロジェクトモデルをしっかりまわす。
・疑うこと。自分の見方も、今ある評価も。

私は、野元さんのお話を聞きながら、「伝えるというのは、意志だ」という言葉を思い出していました。この言葉をどこで聞いたのか、はっきりとは思い出せないのですが、作品というのは「見せれば何かが伝わる」のではなく、「見せる側が意志をもって伝えている(伝わるように考えている)から、伝わる」のだと気付き、その時の私は、まさに目から鱗が落ちたような気がしたものです。野元さんのお話には、それをもっと具体的に考えていくヒントがたくさん!

野元さんの経験と実績に基づくお話はもちろん、様々なデータや、人間の行動特性(例えば “右側にある最初の展示で立ち止まる” とか。人間の行動パターンって面白い!)についてのお話もとても面白く、メモをとりながら興味深く聞いているうちに、あっという間に時間が経っていきます。

体感グループワークでさっそく考えてみる

はじめての写真展示学

ワークショップは座学だけで終わりではありません。ワークショップの最終仕上げは、参加者を2つのグループに分けて、実際に展示を企画してプレゼンしてもらうという体感グループワークです。

・展示作家
・開催時期
・目的、目標

この3つは野元さんから情報が与えられます。それを元に、写真展タイトルを考え、メインターゲットの設定、プロモーション活動の展開、展示構成構成(サイズ・形式・点数・レイアウト・イベントの有無など)を決め、あわせて予算の配分なども具体的にプランニングしていきます。

はじめての写真展示学

まずはグループ内でブレストをして、アイデアを出していきます。2日間で学んだ視点を活かし、「なぜそうするのか?」という根拠をもってプランニングしていきます。みなさん積極的に意見を言って、議論が盛り上がっていきます。どんな展示プランが出来上がるのか、ワクワクです。

ブレストの後は、まとめ作業。プレゼンに向けて内容を整理し、いよいよ発表です。

はじめての写真展示学

展示の開催日数、展覧会タイトル、誰をターゲットにどのようなプロモーションを行うのか、何をどれだけ販売することを目標にするのか。展示レイアウトのイメージや予算配分も示しながら発表していただきました。

はじめての写真展示学

発表を聞く野元さんも真剣!
2つのグループそれぞれの発表が終わったら、野元さんによる講評です。

この短い時間に、その場で展示企画するのは実際にはとても難しいことで、どちらのプランもそのまま実現するのは難しそうでしたが、それぞれに面白い着眼点からのアイデアも盛り込まれていました。

はじめての写真展示学

実は、課題として出された展示は、過去に野元さんが実際に企画した展示をベースにしていました。そこで、実際にはどのような展示が開催されたのか、どのような戦略で計画したのかを、野元さんが解説してくださいました。野元さんの企画には、全てのことに “なぜそうするのか” という、根拠があります。

“展示を感覚で作るのではなく、目的の為に根拠をもって企画する”

2日間のワークショップを通して一貫して伝えられたこの大切な視点は、これから皆さんが展示を開催する時にはもちろん、鑑賞者の立場で様々な展覧会を見る際の新しい着眼点としても、きっと活かされていくことと思います。

「展示学」という言葉からは、一見するのと展示する人向けのイメージがあるかもしれませんが、実は鑑賞者としても知っておいたら面白い内容ですし、ギャラリーをやってみたいと思っている方や、展覧会をプロデュースすることに興味がある方も、絶対に知っておいて損はないと思います。むしろ、知っておいた方がいい!今回のワークショップの正式名称が「観る楽しみ 開く楽しみ!はじめての写真展示学」となっていたのは、そういう想いがあったからなのです。

参加者の皆さんからは「もっと学びたいので、ぜひ第2弾を!中級編を!」というご要望もいただきました。ぜひ開催できるように、機会をつくっていきたいと思います。

 

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